いよいよ最終週となった朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」。
第151話では唐沢寿明演じる花山が、出社しないと思ったら取材のため広島にいると高畑充希演じる常子に電話で伝えるところで終わります。
数年前に病に倒れてから健康状態があまり良くない花山。以前のように遅くまで会社にいることはなくなり、早めに退社して家族と過ごすという生活をしていました。そんな健康状態がすぐれない中で遠い場所での取材には無理がある、と警告する常子。
その常子の言葉を遮り、なにやら意を決した様子で取材に向かう花山。
なぜ広島?この並々ならぬ様子は・・・?
気になる。(笑)
きっとモデルになったエピソードがあるはず!
・・・と思って調べたら、ありました。(笑)
ご紹介します。
目次
モデルは暮しの手帖「戦争中の暮しの記録」
花山のモデルとなった天才編集者・花森安治。
実際の花森安治も1969年(昭和44年)58歳の時、心筋梗塞で倒れています。
取材先の京都で倒れ2ヶ月療養したのですが、入院はせず、ホテルでそのまま療養したそうです。
そしてその9年後の1978年(昭和53年)、66歳でその生涯を閉じています。
ドラマではたびたび胸を押さえて苦しそうな様子を見せている花山ですが、ドラマの進行は史実に大まかに沿っているようですね。
そして「なぜ広島か?」という疑問に答えを出してくれるのが、実在の特集企画、暮しの手帖「戦争中の暮しの記録」。ただし実在の雑誌自体は1968に96月号として発行され、1969年8月15日に「戦争中の暮しの記録<保存版>」として出版されています。
戦争に加担したことを悔いていた花森安治。彼は戦時中大政翼賛会に関係する団体に所属して国策広告に携わり、戦争をあおるようなキャッチコピーなどを手掛けます。そのことを悔やみ、戦後の経済成長で記憶がどんどん薄れていくなかで、雑誌として次の世代に戦争とはいかなるものなのかを伝えることをしたいと思っていたようです。
ですからドラマの設定としては、花山はこれから新しい企画を始めようと単独広島へ赴き、そこで再び倒れるが、ライフワークとしての戦争特集号に死を覚悟で取り組む、ということになるのでしょう。
実在版「戦争中の暮しの記録<保存版>」がすごい!
実在する暮しの手帖「戦争中の暮しの記録」は驚異的な売り上げとなりましたが、雑誌では保存に弱いということで1年後に出版されたのが「戦争中の暮しの記録<保存版>」。
この本、いまでも購入できるんです!
というかむしろ、現編集部の方が「毎年夏になると必ず売れる」とおっしゃるほど、今でも重版されつづけている本なんです。
すごいことですよね。。。
その理由は戦争を体験した人たちが自分たちの暮らしのレベルでその体験を語っていること。今まで文章を書くということをしてきていなかった普通の人たちが、初めて筆を執って自分のありのままの体験を語るということで、戦争中の生活が手に取るようにわかる内容になっているからなんです。
花森安治が1年前に一般募集をかけ、1736通の原稿が日本中から送られて来たそうです。どれも捨てがたくて選ぶのに大変苦労したようですが、126通に絞られ、まとめられました。
時がたつと薄れていく記憶、そして戦後70年以上がたち、体験者もどんどんこの世を去っていく・・・現在のこの状況を、まるで花森安治は手に取るように感じ取っていたのでしょうね。
それを考えれば、時がたっても色あせない、非常に偉大なものを残してくれたと言っていいかもしれません。
まとめ
とと姉ちゃんもいよいよ終わりに近づいてきました。この終わりの段階で花山がライフワークとしての「あなたの暮らし」の戦争特集にどのように取り組むのかが見どころとなりそうですね。
そしてぜひモデルとなった暮しの手帖「戦争中の暮しの記録<保存版>」も一読してみたいですね!